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仮説の冒険 吉田 司

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6 護送船団方式時代に地獄は存在しなかった?

 護送船団ニッポン株式会社(企業共同体)の中で、労働者サラリーマン家庭がどれだけ安穏だったか=介護地獄などなかったかについての論点をもう少し深掘りしておこう。家族論における東西の歴史的名著40冊を紹介した山田昌弘編の『家族本40』という書物もあるが、その中で山田は木本喜美子の『家族・ジェンダー・企業社会』を取り上げ、戦後日本の経済成長における企業社会と労働者家族の「共犯関係」の中核概念である『家族賃金』の問題を次のように紹介している。
「家族賃金は、システムとしてみた場合、終身雇用慣行、年功序列賃金体系、そして、企業内福祉の三点セットであると把握する。男性労働者は、企業に勤めさえすれば、一生妻子を養う収入が保証される。そして、若く一人暮らしのころは給料は低く抑えられるかわりに、結婚し、子育て期にかかり、生活費が上昇するにつれ給料が上昇し、中年期になるとローンを組めば住宅も買える程度に給料は高くなる。若い頃は独身寮が、結婚すれば社宅が提供される。また、金利が優遇された住宅ローンが整備されたり、家族そろって利用できるレジャー施設をもっている企業も多い。つまり、労働者家族の一生の生活を丸抱えするシステムが家族賃金システムなのである。
家族賃金システムは、木本が調査したトヨタ自動車に代表されるような、戦後日本の大企業に典型的にみられるものであるが、中小企業にもある程度存在した。企業が家族賃金を提供しなければ、男性労働者が集まらなかったからである。また、歴史的には、一九世紀欧米で成立した概念であり、けっして日本固有のものでないことが示される。
労働者のライフサイクルに合わせて企業が賃金を供給することに、経済的合理性はない。木本がレビューしているように、家族賃金は、結局は、労働運動を弱体化させ資本家の利益になるという階級主義的理論もあれば、家族内の男性(父―夫)が他の家族成員を支配するためという家父長制理論も存在する。ここで、木本は、労働者家族の立場から家族賃金を考察する。家族賃金は、19世紀ヨーロッパでの成立当初から、労働運動の目標として存在していたことを見出す。
家族賃金要求の裏には、労働者階級の近代家族(当時のブルジョア中流階級の家族)への熱望が存在していた。当時のブルジョア中流階級家族は、いわゆる近代家族の原型であり、男性がブレッド・ウィナー(一家の稼ぎ手)として家族を経済的に支え、女性は愛の名において家事労働をおこなう性役割分業家族である。労働者が、ブルジョア近代家族モデルを受け入れ(させられ)たことにより、企業と近代家族の共犯関係が成立したのである。家族賃金は、労働者家族の男性だけでなく、女性の熱望と憧れの的になったことが重要な要素なのである。
企業が提供する『家族賃金』という一つの制度こそが、『労働者階級』における近代家族を支える基本的装置であることを導きだし、その戦後ニッポンでの成立過程を跡づけたことが本書の中核論点である」
 この家族賃金システムによって戦後日本の「核家族化」は大成功した。労働者家族は安定的で豊かな生活を手に入れ、企業は「会社のため」に献身的に働く労働者を手に入れたというお話だが、それだけではなかった。強調したように会社共同体による福利厚生システムが機能している間は、家族だけに自助努力を強制する〈在宅介護〉地獄などは基本的に存在しなかった……と言えよう。
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  1. 2013/03/17(日) 11:05:04|
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