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仮説の冒険 吉田 司

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4-1 老人介護の世界史

そこでですね、わたしは猛勉強したの。社会保障とか生活保護とか老人介護の世界史を。つまり国家による公的救済を論じるときのポイント=そもそも〈国家はなぜ老人救済事業をしたがるのか〉(*この救済衝動が転移して「救済せねばならない」という国家法=救済制度が成立する)という生活保護制度(老人保護はいつの時代・どこの国でもその中心概念)がこの世に必要とされる理由=根源的秘密を、です。

国家は決してそれを慈善事業でやっているのではありません。恩恵を施しているのでもない――その秘密をお教えしましょう。

その秘密は、1601年制定の英国エリザベス一世「救貧法」の中に隠されていました。もしあなたが介護地獄の過去・現在・未来に苦しむ人なら、ぜひわたしの勉強ノートのメモ「世界の社会保障の歴史からの抜粋・引用集」を味読して考えてみてください。

そしてわたしたちは(1)どうその地獄から脱出するか、それとも(2)地獄そのものを壊すためにムーブするか、あるいは(3)のまだ考えもつかないユニークな脱地獄の道を考え出し、ネット公開してくれるか……あなたはあなたなりの、わたしはわたしなりのDIY(Do it yourself)の道を探る試行を始めませんか。

では、現代ニッポンの苦痛の日々の再確認から17世紀イギリスへの想像力のダイビングです。ボン・ボヤージュ(幸運な航海を)!


介護で狂う私の人生

まず、データを揃えよう。『人生を狂わせずに親の「老い」とつき合う』(和田秀樹 講談社プラスアルファ新書)から引用するね。

○介護していた家族と心中したり、殺害してしまったりする「介護殺人」は1998年~2009年に454件。こうした悲劇は決して他人事ではない。いまやだれにでも起こる可能性がある。
○公的介護が不足し高齢者が介護施設に入れないという状況のため、長時間の在宅介護疲れ→「介護うつ」に陥る人は約10万人。うつ病患者の中に自殺が急増している。さらに家族の介護・看護のために職場からリタイア、離職する人は約14万4800人(2006年)。40~50代が全体の57%で、この年代の離職者は介護が終わっても復職はほとんど不可能。働き盛りのベテラン労働力が社会からむなしく失われてゆく。
○離職して老親介護・老老介護に疲れ果てて自殺する……こんな介護地獄から脱出するには、公的な介護施設の充実が必要なのに、現在の特別養護老人ホームの総定員数は41万人しかいない。あと42万の入所待機の高齢者が行列をなして待っている。その上に、要介護と認定された高齢者は全国に475万人もいる。「介護崩壊」ニッポンと言わざるを得ない。
○解決策は、個人個人の〈親子関係〉=家族の私的介護に頼るのではなく、社会全体で老人介護を支えること=特養ホーム(国民年金の平均に近い月額6万円前後)の拡大が必要なのに、厚労省などの国家政策は「長期にわたって抑制されている」。介護施設を増やそうという気配がまったくない。2001年からスタートした介護保険は「在宅介護を前提にした制度設計」で老親介護・老老介護を家族に一層強制する、反動的な性格を持っている。在宅介護は家族に24時間対応を強いるのだ(徘徊老人の例を見ればよくわかる)。介護地獄の最も直接的な原因はこの「在宅介護偏重のしくみ」の中にあると言ってもいい。

 では、なぜ国は公的な介護施設をネグレクトするのか? 『自衛する老後』(河内孝 新潮新書)からも引用するね。

○「背景にあるのは、危機に立つ国家財政と厚労省のかたくなとも思える在宅介護への誘導である」。自民党・小泉政権以降、進められた聖域なき財政再建路線によって社会保障関係費の自然増加分のうち、毎年2000億円が削減され続け、特養施設整備補助金も一床あたり240万円→225万円と下がった。負担割合も国1/2、自治体1/4、福祉法人1/4→国と自治体で1/2、福祉法人1/2と悪化させた。介護給付金も、国の出費を削り自治体の負担を増やし、その一方で在宅介護の給付金は据え置いたという。「これでは、国以上に財政危機にあえぐ自治体が施設増設を渋るのは当然で、『露骨な在宅介護への誘導』である」。

 河内孝はさらにこう論を進める。

「厚労省権限の源泉である医療保険を守るため、急増する高齢者の療養型医療費の一部(年間約3000億円)を介護保険の方に肩代わりさせることにした。予算抑制の標的にされたのが特養、労健などの介護施設整備事業である。仮に42万人の特養待機者を解消しようとすれば、100床の施設が4200カ所必要となる。建設費はざっと4兆円。半額補助として国、自治体は2兆円を負担することになる。これに比べれば、訪問看護、居宅事業と呼ばれるグループホームなどへの補助金は、はるかに安上がりですむ。在宅介護への誘導を図る厚労省の狙いは、ここにあった」

 う~ん。おのれ、厚労省の官僚輩め! お前らのために幾百万の高齢者とその介護家族がどれほど血の涙を流していることか。『家族福祉論』(相澤譲治、栗山直子編著 勁草書房)って書物が、そうした国のサボタージュ=安易な「在宅介護」利用政策を批判している。その声も聞けっての。

「高齢者の家族介護について兵庫県家庭問題研究所の行った調査によると、介護の圧倒的部分は、女性(88・7%)によって担われている。また、介護の担い手は、長男の嫁が35・8%と最も多く、以下、被介護者の妻が29・8%、既婚の娘が12・3%、長男以外の嫁7・3%となっている。つまり要介護者が夫の母親の場合は、夫の配偶者である嫁が、夫の場合は妻が、母親の場合は娘が、子どもの場合は母親が介護者であり、圧倒的な部分が女性の負担に負っていることがわかる。わが国の在宅介護には、家族によるケア=女性によるケアという等式が存在しているのである」

 なぜか?

「『むかしは、家族がお年寄りの世話をしていた』という意識が、わが国では支配的であるため(中略)わが国の家族の多くは、自助能力の限界を意識しながらも、あくまでも介護問題を家族内で解決することを望んでいる。したがって、この危機的状況においても、家族への要介護者への依存度は大きく下がることはない」

 いや、そうとも言えるかもしれないが、もっと現実的には2000年に始まった介護保険制度による福祉サービスの提供という「自助」政策の国民への強要が在宅を増やしているのではないんですか?

「家族を規定し続けている国民の側の自助意識と、それを政策的に活用してきた国の発想の転換が必然的に要請されよう」

 そうでしょう、やっぱり。年取った親を子どもの家族がひきとって介護しなければならないという「自助」精神の転換が必要なんですよね? いわば一種の「自助の放棄」。それって《姥捨のすすめ》じゃないですかぁ(笑)。

 それにね、国家及び厚労省のその「自助の強制」に騙されない人たちの声もあるってことが、この本には載っている。

「当事者の声
『施設福祉から在宅福祉へ』『コミュニティケアの実現』.これらのフレーズはわが国の福祉改革のキャッチフレーズとなっており,異論を挟む余地はないようである.だが果たしてそうであろうか.在宅で高齢者を介護する家族の声は,福祉政策の掲げる理念とは裏腹に,悲痛な叫びを訴えている。
『老人医療が在宅介護になりつつあるという話をききます.介護される側にとっては良いことかもしれませんが,する側の問題がないがしろにされているように思います.……食べるに困らず,余った労働力のある家庭なら在宅介護も可能でしょうが,そのような恵まれた家庭のほうが少ないのではないでしょうか.私の経験上,介護する側は,1年365日,精神的にも肉体的にも休む暇がありません.まだ30代前半だった私は,そのために白髪だらけになり,生理も止まり,十二指腸潰瘍を患いました.家族だからなどという安易で情緒的な判断は共倒れのもとです.また,介護のために失ったものは,一体誰が補償してくれるのでしょうか.……大切なのは,誰も犠牲にすることなく,個人が個人の責任のもとに一生を終えることができる社会を作ることです.……『お父さんの遺族年金もあるようですから,お嬢さんが仕事をやめて,お母さんを引き取って介護をなさったら良いのではありませんか.』某国立病院への入院が長くなり,退院を仄めかされ,医療相談室に電話した時の答えです.母亡き後の私はどうやって食べていけというの?……現実はこんなもんです.住み慣れた我が家で家族の愛情に囲まれて……なんて,人の情につけ込んでうやむやにしようという行政の無策とごまかしにだまされてはいけません.家族の愛情と現実の生活とは別問題ですよ.』注)
 わが国では,福祉政策における在宅福祉の積極的な位置づけと評価の一方で,家族の抱える問題や悩み,苦しみは考慮されていない.これが現実である.
 注)『介護の現場――NHKに寄せられた222通の手紙から』NECクリエイティブ,1997年,p.107~109.」
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  1. 2013/02/21(木) 02:40:03|
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