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仮説の冒険 吉田 司

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「トモダチ作戦」の正体 その6

わたしは、このブログで以前、東北地方をグローバル経済=多国籍企業の部品工場と世界労働者の問題として描いたが、このみちのく下北はそれとも異なる、一線を画した日米同盟の軍事秘密基地ゾーンが広がっている。例えば、『ルポ 下北核半島』(鎌田慧、斎藤光政)によれば、ロシアや中国の原子力潜水艦が往来する日本海や津軽海峡「原潜回廊」には、それを監視する海上自衛隊の竜飛警備所がある。米国製の強力な水中固定聴音機(ハイドロフォン)が設置され、潜水艦の暗躍音を24時間態勢で追跡している。この下北のハイドロフォンは「米海軍が世界中の海底に張り巡らせている潜水艦探知用のソナーシステムネットワーク(SOSUS)の一部なのだ」(『ルポ 下北核半島』)という。太平洋側には海上自衛隊の八戸航空基地があり、その潜水艦狩りをするための「空のハンター」P3Cが20機待機する。「日本有事」の際はただちに飛び立ち津軽海峡を封鎖(機雷の大量投下)するための航空基地だ。さらに、むつ市の釜臥山山頂には空自大湊分屯基地の巨大なMD(ミサイル防衛)用の最新鋭レーダー「FPS-5」が建設された。八階建てビルに相当する高さ40メートル「自衛隊の歴史の中で最大のレーダー」で、その視野は3000キロ以上、中国東北部まですっぽり視野に入るという。

「防衛省はレーダー設置の理由として北朝鮮の脅威を挙げていますが、釜臥山のレーダーが視野に収めているのは中国東北部。中国軍はここを中心に、日本を射程内に収める『東風21』(射程1800キロ)と呼ばれる中距離弾道ミサイルを33基配備しています。もちろん『東風21』は核弾頭を搭載しています」(『ルポ 下北核半島』)


このFPS-5レーダーは、日本海側つがる市にある米陸軍車力通信所の「Xバンドレーダー」(移動式早期警戒レーダー)と連結している。そしてこの電子システムは一体どこまでがアメリカの領域で、どこまでが日本の力が及ぶ領域なのか……誰も知らない。

いや、もう少しハッキリ書こう。斎藤光政のレポートはこう綴っているのだから。

「Xバンドレーダーと、それを守る米民間軍事会社『Xe』(旧名ブラックウォーター)……。Xe社は米軍のほかCIAともつながりが深い傭兵部隊。……さらなる『日本の米国化』の象徴にも映る」


ブラックウォーターは、イラク戦争で肥大化したいわゆる〈戦争請負会社〉だ。米軍の業務の民営化・外注化で兵器の調達や戦闘兵士の養成・派遣などを行う戦争サービス業だ。戦争とビジネスの境目がなくなってしまった新自由主義の自由放任の世の中を代表する企業でもある。最新刊『ショック・ドクトリン』(ナオミ・クライン)は、こうした〈戦争〉や地震・津波の〈巨大災害〉などに遭遇した人々の不幸やショックを利用し、民営化ビジネスを拡大=ビジネスチャンスに変えて大儲けする《軍産複合体》の新自由主義をディザスター・キャピタリズム(惨事便乗型資本主義)と呼んでいるが、この本の中でブラックウォーター社をこう紹介している。

「ラムズフェルド(国防長官)が徹底して無駄を省く『ジャストインタイム方式』の戦争を構想し、戦闘の中核を担う少数の兵力しか送り込まなかったこと……人員削減したことにより(中略)、最小限に抑えられた軍隊をバックアップするために……戦争民営化産業が形成されたのだ。(中略)ブラックウォーター社の当初の契約任務はブレマーの身辺警護だったが、占領から一年後には本格的な街頭戦に加わるようになった。2004年4月。ナジャフ市でサドル師率いるマフディ軍が蜂起すると、同社はアメリカ海兵隊の実戦に加わるよう司令を受け、丸一日に及ぶマフディ軍との戦闘に参戦した。この戦闘では数十人のイラク人が命を落とした」


イラク占領から3年後にはこうした闇の民間兵士(傭兵ビジネス)は4万8000人にのぼり、経済紙はそれを「バグダッド・ブーム」と呼んだという。そこで、「ブラックウォーターはワシントンの辣腕ロビイストを雇って公的表現から『傭兵』という言葉を消すよう画策し、自社を一大アメリカブランドへと変貌させた」(『ショック・ドクトリン』)。

それが下北半島に姿を現した米民間軍事会社『Xe』社である。つまりいま青森県下北は、東京よりもイラクの自爆テロの現場の方に近いって気がするわけなのさ。

さらに驚くべきは米軍三沢基地だ。東西冷戦の時代、ここはソ連・中国・北朝鮮をターゲットにした航空機による核攻撃=核出撃基地だった。広島型原爆の5倍の破壊力をもつMK7という「世界初の実用核爆弾」を抱えた一人乗りのジェット機(F84Gサンダージェット)が40機、中国東北部などに向けて次々と飛び立ってゆく……計画だった。斎藤光政は『ルポ 下北核半島』で書いている。

「驚くべきは、こうした核攻撃の多くが、第二次大戦のカミカゼまがいの『片道攻撃』だったという事実だ」


F84Gの航続距離(約1000キロ)では、核投下のあと、三沢まで帰り着くことは不可能だった。そして今は、GBU38新型精密誘導爆弾を抱いたF16戦闘機(空中給油可能)が大量配備され、イランや北朝鮮に向けて出撃OK! の態勢を整えている。GBU38は硬い岩盤をえぐり、地下深く潜り込んだ敵国の司令部、軍のミサイル発射基地を破壊する地下貫通爆弾だ。すなわちイランの地下25メートルに作られたウラン濃縮施設や地下実験用のトンネルあるいは北朝鮮・寧辺の岩山の中にある核施設、ノドン・テポドンなどのミサイル発射施設への出撃・破壊命令を待っているのだ。

ここでも下北は、東京よりもイランに近いってわけで、もう平和憲法九条の「手段としての戦争放棄」もへったくれもない。日本の中の〈アメリカ租界〉=〈小さな米国〉状態なのである。

ところがね、それだけじゃ終わらないのさ。青森といえば、「原発ルポ」の定番コースとまで言われた六ケ所村の核燃料サイクル基地があり、東通原発があり、MOX燃料(ウランとプルトニウムの混合酸化物)を作る大間原発を建設中だ。でね、その六ケ所村は米軍三沢基地のすぐ近く。東通原発は、海上自衛隊下北海洋観測所のすぐとなり。そして大間原発は海上自衛隊竜飛警備所のすぐ下手にある。とくに六ケ所村がすごいね。日本最大の核燃サイクル基地=ウラン濃縮工場・再処理工場・低レベル放射性廃棄物埋設センター・高レベル放射性廃棄物貯蔵センター・MOX燃料工場となんでも揃っている。

もし下北のこれらの核(原発)施設がフクシマ級の水素爆発を起こし20キロ、30キロ圏が放射能汚染で立入禁止→菅直人前首相が言ったかどうか知らないが、③の「東日本がつぶれる」ようなことになったら→米軍撤退のようなアクシデントに発展したら、アメリカの「パクス・アメリカーナ」(米国による世界秩序)は一夜にしてアジアから瓦解するだろう。沖縄の普天間飛行場移設レベルの問題ではない・決定的破滅が始まる。

そう、トモダチ作戦はその下北の「小さな米国」の破滅が「パクス・アメリカーナ」の破滅に連動せぬように、フクシマの悲劇は東北三県(福島・宮城・岩手)で阻止せねばならなかった。《下北を守れ!》……これがトモダチ作戦にこめられた最大の秘密指令だったとわたしは今ここで、そう思うのだ。

二つの記事を載せよう。特に斜線部分(筆者による)の文章に注目してくれ。

⑩3月末で米国防次官補を退職したグレッグソン氏に、災害救援と日米同盟について聞いた。
――今回の迅速で大規模な支援は、日本が同盟国だからですか。
 確かにそれはあった。米国が日本を尊敬していること、日本に米軍が駐留していることも理由だ。(朝日新聞4月7日)

⑪日本側が警戒しているのはロシアや中国の動きだ。震災後、ロシア機が防空識別圏を飛行したり、中国ヘリが海自艦に異常接近したりする例があった。自衛隊の半分近くにあたる10万人が災害救援にまわり、防衛が手薄になるなか、「米軍が日本近海で存在感を示してくれることは心強い」(政府関係者)という。
 米国との関係が、すべて円滑に運んだわけではない。福島原発事故に関しては、米側は当初、不信感を募らせた。政府からの情報が混乱し、不十分だったからだ。日本国内に住む米国人を保護する上でも、敏感にならざるをえなかった。
 米側は、官邸以外からも情報を集めるべく、一次情報をもつ東京電力社員を入れた日米協議の場を作るよう要請した。(朝日新聞GLOBE 4月3日)


⑩と⑪の斜線部分が、つまり「米軍」と「米国人保護」さえもトモダチの仮面の言葉・カモフラージュであろう。それは正しくはこう読み替えるべきだ。「日本の東北にある〈小さな米国〉を守るため」あるいは「東北が米国の〈核心的利害〉地帯だったから」と。いまやみちのくの奥の奥では、日本が消えかかっているのさ。震災や原発事故ではなく、軍事同盟によって。

とまあ、そういうわけで、「東北はもうナショナルな意味での『日本』ではなくなっている」という物語はここでひとまず終わりとしよう。

同時に宮沢賢治の「雨ニモ負ケズ風ニモ負ケズ」の歌の流行への批判から始めた連載にもピリオドを打ちたい。次章が最終章、ケジメをつけるからね。それで、歌で始まったから、やっぱり歌で今日の終止符を打ちたいな。こんな東北・青森出身の寺山修司の小噺付きでさ。

最近、寺山修司の『田園に死す』などの作品にしばしば登場する「時計」のモチーフが、何を意味しているのかを知る機会があったんです。僕はあの柱時計とか腕時計は、ダリの前衛画ふうな、ねじれた時間を象徴させているんだと思ってたの。そしたら、それだけじゃないんだよね。寺山の母親は、三沢市の米軍キャンプで働いていた。ボーイフレンドをもち、派手な格好をして歩く母親のことを、友人らはみんな知っていてときには、嫌なことも言われたらしい。だから、寺山は母親が仕事から帰ってくるのを、深夜の何時になっても眠らずにじっと柱時計をにらみながら待っていたっていうんだよ。
 彼にとってのふるさとは、愛しい母親像が日々解体されてゆく現場だったといってよい。誰が素顔のままそれを直視できようか。彼の作品がいつものピエロ・道化の仮面をかぶるのは、そのためだ。
 寺山の父は戦死した。母親は米軍のメードとなった。その二つの人生の大きな欠陥と解体をもたらしたのは誰か。その問いを念頭に置かず、彼のこの唄を読んではならないと思うぜ。

「マッチ擦るつかのまの海に霧ふかし身捨つるほどの祖国はありや」
(舞台評論「東北からの大衆芸能」より 筆者談)


だからこの歌は大東亜の聖戦崩壊の歌よりも、もっと切実に震災・津波・放射能に揺れ動くわれらニッポン・21世紀の東北の今を映し出す歌に聞こえる。わたしには。
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  1. 2011/11/16(水) 00:03:57|
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