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仮説の冒険 吉田 司

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幽霊軍人、やっと消えた

あのね、報告するの忘れてたんだけどさ、このブログ・オープニングに突如わたしの頭脳スクリーンに乱入・占拠し、「セ・カ・イ・ハ・ヒ・ト・ツ・ニ・ナ・ル」と叫び続けていた幽霊軍人(関東軍参謀・石原莞爾)ってのがいただろう? あの幽霊がようやくわたしの脳髄の中から退散・姿が消えたのだ。

なぜってか? 俺にも理由はよくわからんのだけど、拓殖大学教授・野村進が書いている「リレー読書日記」(『週刊現代』)のこの記事を目にして、わたしが「コレって、あなたの満州ユートピアの物語の一部ですよね」と幽霊軍人に語りかけた頃から、幽霊は次第に和解的になり、叫び声も少なく小さくなっていったことは確かだ。そして大震災から4か月過ぎた頃のある日、石原莞爾はわたしの頭の中から消え去った……。

その野村進が書いた読書日記の一部を引用するが、日経ビジネス臨時増刊『徹底予測 日本の復興』(日経BP)で企業人や研究者の様々な提言がある中で、この東北復興案が面白いとコメントした、ほんのチョットした短文である。

「日本総合研究所理事長の寺島実郎は、太平洋沿岸の被災地から東北地方を横切って日本海側に出、そこから中国や韓国などのアジアに製品を輸出せよと言う。現実的かどうかは別にして、おもしろい発想である」

アジア通の野村にしてはうかつな文章である。寺島は、近年、日本海沿岸の日ロ貿易が隆盛し始めたのをおそらくは知っていて、その通商先を露国→中国・韓国に書き換えてみせただけの即製の復興案に思えるからだ。なぜならわたしは3年前、その「環日本海経済圏」の新たな台頭について東京新聞のコラムで取り上げた覚えがあるからだ。

「オイルマネーの時代である。福田・プーチン日露首脳会談でも、東シベリアでの初の油田共同開発が合意された。さらにそのロシア石油経済の急成長に結びついて、日本海沿岸地域の対ロ貿易量も拡大しているらしい。
 日本の中古車や農産物がシベリア鉄道に載って続々と彼の地に運ばれているという。いわゆる「環日本海経済圏」の抬頭だが、いままでは山陰・島根などを中心にしたイメージが強かった。
 今回は東北の秋田、新潟も元気なのだ。「国土交通省は、自動車部品をコンテナで仙台から秋田港に運び、ロシアに輸送する試験を実施した。……秋田や新潟は将来の輸出基地に成長する可能性もある」というのである。
 こうした東北興起の機運は、忘れかけていた古い記憶と夢を想い出させる――明治天皇や薩長藩閥と闘って「北方政権」輪王寺宮公現法親王を樹立しようとした幕府軍・奥羽越列藩同盟の夢だ。会議所は仙台に置かれた。敗北し「賊軍」と呼ばれ停滞に陥った近代東北には、経済独立をめざす東北ナショナリズム論が流行った。十九世紀の「交通革命」(シベリア鉄道の開通・ウラジオストク航路の開設)に乗って、日本海側地域とヨーロッパ市場を結ぶ夢だ。
 つまりね、現在の「環日本海経済圏」思想は、賊軍の反逆の夢から生まれたのさ」(2008年5月2日 東京新聞 本音のコラム)

〈東北ナショナリズム〉についても、このブログで書き忘れていたので補足しておこう。列藩同盟敗れし後の明治時代の東北では、薩長藩閥の強権的支配に対抗して自由で理想的な〈新天地〉を建国する=東北独立論が流行ったのである。1894(明治27年)に青森県の『東奥日報』はこう主張したと、『東北――つくられた異境』(河西英通)にある。

「シベリア鉄道・ニカラグア運河(のちパナマ運河に変更)などの完成によって国際貿易はますます発展し、世界的に資本主義のネットワークが完結するだろうという基本認識のもと、東西貿易の結合点として津軽海峡が浮上し、……青森港を「世界の埠頭」にし、青森県を「世界貨物の倉庫」にすることで、「日本の貧弱国」から「東洋の最栄地」になれると主張したのです。そのために下北半島に運河を開削して太平洋航路便を直接陸奥湾に導き、青森港に入港させようという巨大プロジェクトを計画しました」

また、この本によれば、山形自由新聞も『東北大勢論』(1895年)で、世界資本主義と東北との関係を論じていたという。
「今日の世界は『鉄道ト汽船ト電信ト新聞紙ト郵便トノ第十九世紀力』によって、急速に一体化しつつある。『世界文明ノ大潮流』は資本主義の発達と共に、太平洋を越えて日本にやってきた。東北はやがて「南方ノ人士」(薩長土肥)を圧倒する、ロンドンやニューヨークに匹敵する「便利ナル地」になる。すなわち「第二ノ維新」がやってくる」と。

これが〈東北ナショナリズム〉=東北独立論の原イメージである。

もう明らかだろう。明治ニッポンが日露戦争に勝利して中国大陸の東北地方=南満州鉄道を手に入れたとき、ロシアのシベリア鉄道と結んでヨーロッパ市場につながる〈東北ナショナリズム〉の夢は、単なる絵空事ではなくなった。〈日本の東北〉ナショナリズムの新天地構想が満鉄を通して〈中国の東北〉地方に移植されていった……これが石原莞爾の「満州国」建設なのである。もし石原なかりせば、満州経済成長5カ年計画(モデルはソ連社会主義「計画経済」)→戦時統制経済→戦後の「護送船団方式」(親方「日の丸」株式会社)のサクセス・ストーリーもなかったわけで、その意味で石原莞爾は悪魔と天使の両翼をもった男であり、その軍人の存在を戦後平和の経済大国が完全抹殺・埋葬し続けてきたことは許せない=わたしがそう頭脳スクリーンの幽霊軍人に語りかけたとき、その軍人の顔が初めてニヤリと笑ったように思えた。それから映像はプツンと消えた……。

「再見(サイチェン/さようなら)」とも言わないで。

とまあ、そういうわけで、野村進が書いたほんの2、3行の短い「読書日記」の裏には実は深い近代東北の挫折が隠されているのであり、同時にわたしには寺島実郎が想起したというその東北復興プランは、日本とロシアと満州→アジア全域に拡大した、あの帝国主義時代の経済ルート(大東亜共栄圏)の“焼き直し”にしか見えないのである。「おもしろい発想」(野村進)というだけの話ではすまない。

とまあ、ここまでが前座の話。次回の標的は文化人類学者・中沢新一。 “撃って”いくからね。(つづく)
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  1. 2011/09/08(木) 00:39:27|
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