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仮説の冒険 吉田 司

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3.11以後を見る第3の目 その6

前回点描したような電子戦争時代のデジタル・ディバイド(格差)は当然サイバーコマンド(兵士)の軍拡を招くだろう。実際今年の2月、日米は中国の軍事力増強に対抗する〈サイバー安保条約〉とも呼ぶべき新戦略の連携に踏み出した。

日米安全保障協議委員会で合意を目指す新たな共通戦略目標で、宇宙やサイバー空間を「国際公共財」と位置付け、その安定的な利用に向けた連携強化を盛り込む方向。(中略)サイバー空間では防衛システムのほか、電力、金融など主要インフラに対する破壊活動や情報流出対策が共通課題で人材育成や具体策を検討する。(朝日新聞2月5日)


ただしここで大事なことは《サイバーの力》が必ずしも軍事的な〈戦争力〉としてのみ規定されてはならないということだ。それは前回までに語った物語の中では〈つなぐ力〉=ジャスミン革命のツイッター利用など民衆革命を可能にする反権力的プロテスト・ムーブメントも生み出す力だった。

サイバー力とは〈つなぎ・切る〉両義的な力である。

朝日新聞10月31日のサイバー関連記事の中にこういう防衛省幹部の言葉が載っている。

「(現在のところは)サイバー攻撃が武力攻撃にあたるかどうかなど、国際法上の位置づけは確立されておらず、国際社会の合意もない。外国によるサイバー攻撃と断定されても、日本では警察が犯罪として捜査する。防衛省が出ることは少ない」


そう、国際条約! いまこの21世紀サイバー・スペース時代に必要なのは、「サイバー空間は第5の戦場」というアメリカ軍の軍事規定ではなく、その逆の《サイバー不戦条約》を作ることである。最低限、諸国民の命をつなぐ電力網(特に原子力発電所)などの生活インフラだけはサイバー攻撃しないというグローバル平和の条約だ。夢物語ではないはずだ。カントの『永遠平和のために』の不戦理念をひくまでもなく、現実に、われら人類の歴史は第一次世界大戦の惨禍の中から「戦力放棄」の思想=1928年のパリ不戦条約(米・ケロッグ、仏・ブリアン、日本・幣原喜重郎)というものを生み出している。こういう内容だ。

「条約国は、各(おのおの)その人民の名において、国際紛争解決のため戦争に訴える罪悪を認め、……国策の手段として戦争を放棄することを厳粛に宣言す」

第二次大戦でヒロシマ、ナガサキに原子爆弾が投下された敗戦ニッポンに平和憲法九条の「戦力放棄」が打ち立てられたのは、このパリ不戦条約の修復=反省からである。なぜならパリ不戦条約に調印していながら、満州事変→日中戦争→対米英戦争へと踏み切った帝国陸海軍、すなわちわれら日本がパリ不戦条約を最初に裏切り、崩壊させた張本人だったからです。

だからいまわれら3.11後の日本の脱原発と反原発のムーブメントは、太陽光発電などの自然・再生エネルギーへの転換運動のレベルに埋没してはならないのであり、核と原発の原子炉とコンピュータの連鎖・連動がサイバー戦争の空間に大きく拡散していくというこの“21世紀的テーマ”に挑まねばならないだろう。パリ不戦条約→憲法九条不戦(ヒロシマ、ナガサキ)そして3度目のサイバー不戦(フクシマ)を世界に訴えねばならないのだと思います。

スリーマイル→チェルノブイリ→フクシマという放射能汚染の歴程を踏むだけでは、このポスト核=インターネット(サイバー空間)万能の時代には対抗できない。決定的に不十分なのです。

『世界サイバー戦争』の著者、リチャード・クラークはこう言っています。「(サイバー攻撃で)ミサイルを目標と違う場所で爆発させることができる」。それなら核搭載のミサイルを発射した国へと逆に送り返し、自国内で爆発させるコンピュータ操作もそのうち可能になるかもしれません。そうなったら核はまったくの役立たず。ますます〈使えない兵器〉の疫病神と化すでしょう。

だからこのブログの最後を飾って、あの原発推進派、自民党の石破茂「原発をなくすということは(核保有の)潜在的抑止力をも放棄することになる」論についてもこの言葉をプレゼントしておこう。クラウゼヴィッツ以来もっともラディカルな“戦争論”を書いたといわれるマーチン・ファン・クレフェルト(イスラエルの歴史学者。専門は軍事史、戦略研究)の“核兵器は張子の虎”という言葉だ。

パキスタンの高官は核開発計画を推し進めているのは、核をもたなければインドに征服される恐れがあるからだと弁明している。また、これまで滅亡した核保有国はないとも主張している。確かにそうだが、一九四五年以降、核を保有しない国で地図から抹消された国もないという事実を無視した発言である。(『戦争の変遷』)

イスラエル国防軍(IDF)は世界的に見ても強力な軍隊だ。兵器庫にはアラブ諸国をすべて破壊できるだけの核兵器とその運搬手段が保管されているが、この事実がシオニズムの初期以来イスラエル軍を支えてきたイスラエル精神とその力(*死闘を演じる兵士の“人間力”のこと)を大いに失う原因になっている。(中略)2006年の夏、レバノンでヒズボラと干戈を交えたイスラエル国防軍の戦いぶりはひどかった。……情熱に欠け訓練も不十分だった。(中略)ついに参謀長が辞任する騒ぎになった。(『戦争文化論』下巻)



つまりね、石破さん。原発→核保有の国防方程式はもう時代遅れなの。原発開発を続けるお金があったら、サイバーコマンド育成や日本ハッカーNPO連合結成にでも使ったほうがよっぽど“割安・お得”なんですよ。

……って、これでブログを閉じようと思ったら、大事な話をもうひとつ思い出した。最後の最後、脱原発の自然・再生エネルギー派で「電力発送電網の分離」→「太陽光パネルの再生電力」→「次世代送電網Smart Grid(スマート・グリッド)」システムの開発などで3.11以後の日本の未来が開けると思っている人々へも、このリチャード・クラークの「大事な話」をプレゼントして終わりにする。

そう、5月以来、わたしのブログに付き合ってくださった方々にありがとう。そしてさよなら……だよね。

オバマ大統領が推し進める“スマート・グリッド”構想は、電力供給網とインターネットとのさらなる融合を意味するため、コンピューター・ネットワーク技術への依存度はさらに高まっていくと見られる。サイバー空間から伸びる魔の手は、送電網や発電機を破壊できる。(中略)つまりサイバー戦士の手は、敵国の電力供給網や敵国の兵器を含む、何千もの基幹システムを無力化もしくは破壊できるのである」(『世界サイバー戦争』)


スマート・グリッド化は《サイバー不戦条約》なしでは、さらなる日本のインフラ危機を招くだろう。
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  1. 2011/12/14(水) 01:28:00|
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